雪嗣は爽やかな笑みを浮かべると、いそいそと神社の奥へと進んだ。

 叶海と蒼空は視線を交わすと、膨れっ面のまま雪嗣の後へと続く。

 けれど、喧嘩なんて三人にとってはいつものことだったので、すぐに気を取り直したふたりは、雪嗣の両脇に並ぶと賑やかに話し始めた。

 こんな夜遅くに三人が集まったのには訳がある。

 それは今日が特別な日だからだ。毎年、夏になると催される星々の饗宴。叶海が見たいと持ちかけると、幼馴染みのふたりは乗り気になってくれた。

 三人がやってきたのは、神社の奥の森を抜けた先にある、村を一望できる高台だ。明かりひとつ届かないその場所は、星を見るのに打って付けだった。

「父ちゃんがこれ持っていけってくれた」

「お菓子! それにしてもすごい量だね」

「雪嗣がいるって言ったらコレだぜ。すげえよな」

 ふたりが蒼空の鞄から出てきた大量のお菓子を眺めていると、その間に、さっさと持参したレジャーシートを敷いた雪嗣は手招きをした。

「早く来い。ピークまでには時間があるが、見逃すともったいない」

 雪嗣の言葉に、叶海と蒼空は顔を見合わせてニカッと笑った。

「ペルセウス座流星群! 楽しみだなあ……!」

 そう、今日は夏の流星群が極大を迎える日。夜空を数多の流星が飾る日なのだ。