「アハハ! ああ、またフラれちゃったなあ……」

「はあ。ドッと疲れたな。まったく、叶海と一緒にいるといつもそうだ」

「私のせいなの……? そもそも、お昼までに仕事を終えてなかった雪嗣が悪い」

「うっ……。量が多かったんだ、量が」

「知りませーん。罰として、今日は一緒にお風呂に」

「それは無理だ! 絶対に無理!」

 汚れるのも厭わずに石畳に座り込んで、賑やかに掛け合いをする。

 ふと空を見上げると、垂れ込めていた黒雲の切れ目から、澄んだ青空が顔を覗かせている。突然の雨に形を潜めていた蝉たちも、賑やかに歌い出した。

 突然の雨に遮られた夏が、急速に戻ってきている。

「おおい、大丈夫かあ。すげえ雨だったけど!」

 その時、濡れ鼠になった蒼空が石段を駆け上ってきた。

 雪嗣と叶海は顔を見合わせると、綺麗な虹を背に駆けてくるもうひとりの幼馴染みに、晴れ晴れとした笑みを向けたのだった。