「はっ……?」

「押しかけ女房としては、これからもサポートを頑張らなくちゃって……痛い!?」

「きちんと話を聞いていたのか? 危険だと言っただろう!?」

 雪嗣は指で叶海の両頬を摘まむと、ギリギリと締めつける。叶海は涙目になりながらも、必死に痛みに耐えて言った。

「危険なのはわかるけど! 雪嗣言ってたじゃない。一番安全なのは俺の傍だって」

「……い、いや。それはそうなんだが……」

 叶海が自信満々に言うと、つい先ほど己が発した言葉を思い出したのか、雪嗣は苦虫を噛み潰したような顔になった。そんな彼に、叶海は得意げに笑う。

「危険だとわかっていても、私は雪嗣の傍にいたいよ。それくらいじゃ私の気持ちは揺るがない。だって、雪嗣のことが好きで、すんごい好きで、大好きだから!」

 そう言って叶海が無邪気に笑うものだから。

 雪嗣は顔を真っ赤に染めると、大汗を掻いて自棄糞気味に叫んだ。

「~~~~っ。ああ、まったく!」

「いたっ……いだいいだいっ……!」

 雪嗣は遠慮なしに力いっぱい叶海の頬を引っ張ると、途方に暮れたように呟いた。

「叶海はどうすれば俺を諦めてくれるんだ……」

「内面も外面も素敵すぎる雪嗣が悪い!」

「意味のわからないことを言うのはこの口か!」

「ぎゃあ! 痛い……! 痣になるう……これは責任取ってお嫁さんにして貰うしか」

「それは困る」

 途端にパッと手を離した雪嗣に、叶海は恨めしげな視線を向けた。

 そしてそのまま、互いに見つめ合う。

「……フッ」

「……ププッ……」

 やがてふたりは、どちらからともなく視線を外すと、肩を震わせながら笑い出した。