「脱・孤独死の危機! やるぞ、私はやるんだから……!」
息を切らしながら、石段を一段一段上る。
別れの際の言葉どおり、雪嗣は今もこの村に住んでいるらしい。
「過去に縛られていても辛いだけ。もう大人なんだから、前へ進まなくちゃ」
――柊叶海、二十六歳。いよいよアラサー突入だ。今日こそ、私は……変わる!
叶海は顔を上げると、えっちらおっちらと階段を進んだ。
子どもの頃は一気に駆け上れた階段がキツい。
――うう。常日頃から運動しておけばよかった……。
ひいひい息を切らし、老いてしまった自分を嘆きながら進んでいくと、最上段が近づいてきたあたりで、視界の隅に綺麗な薄桃色を見つけた。どうやら、境内の桜が満開を迎えているようだ。
――あの日も、こんな風に桜が咲いていたっけ。
別れの日を思い出して、途端に胸が苦しくなる。しかし、すぐに奥歯を噛みしめて気合いを入れ直す。孤独死なんてまっぴらごめん。幸せな老後のために、叶海は額に浮かんだ汗をハンカチで拭うと、残り少なくなった石段を上って行った。
そして――最後の一段を踏みしめた瞬間。
「……えっ?」
目の前に広がった光景に、思わず息を呑んだ。何故ならば、さほど広くない境内に、見たことがないほど巨大な生き物が佇んでいたからだ。
息を切らしながら、石段を一段一段上る。
別れの際の言葉どおり、雪嗣は今もこの村に住んでいるらしい。
「過去に縛られていても辛いだけ。もう大人なんだから、前へ進まなくちゃ」
――柊叶海、二十六歳。いよいよアラサー突入だ。今日こそ、私は……変わる!
叶海は顔を上げると、えっちらおっちらと階段を進んだ。
子どもの頃は一気に駆け上れた階段がキツい。
――うう。常日頃から運動しておけばよかった……。
ひいひい息を切らし、老いてしまった自分を嘆きながら進んでいくと、最上段が近づいてきたあたりで、視界の隅に綺麗な薄桃色を見つけた。どうやら、境内の桜が満開を迎えているようだ。
――あの日も、こんな風に桜が咲いていたっけ。
別れの日を思い出して、途端に胸が苦しくなる。しかし、すぐに奥歯を噛みしめて気合いを入れ直す。孤独死なんてまっぴらごめん。幸せな老後のために、叶海は額に浮かんだ汗をハンカチで拭うと、残り少なくなった石段を上って行った。
そして――最後の一段を踏みしめた瞬間。
「……えっ?」
目の前に広がった光景に、思わず息を呑んだ。何故ならば、さほど広くない境内に、見たことがないほど巨大な生き物が佇んでいたからだ。