龍神様の押しかけ嫁

「…………」

 奥に行ってしまったはずの雪嗣が、どこか引き攣った顔で叶海を見下ろしている。

「……聞いてた?」

 嫌な予感がして叶海が訊ねると、雪嗣は真顔になって頷いた。

 そして、一枚の白衣を叶海の横にそっと置く。

「悪いが、繕っておいてくれないか。ああ、それと……」

 そしてくるりと踵を返すと、どこか硬い声で言った。

「心臓に負担をかけない為にも、今度から褒め言葉は控えめにするとしよう」

 そう言って、再び襖の奥に消えたのだった。

 叶海はゆっくりと顔を両手で覆うと――。

「あまりにも絶望……!」

 哀しみのあまりに身を捩った。
 ――ミィン。
 その時、息も絶え絶えの叶海を嘲笑うかのように、蝉が大きく一声鳴いた。