そんな叶海の心境を汲み取ったのだろう。雪嗣は深く嘆息すると、ぽん、と叶海の頭に手を置いて、普段よりかは優しげな声で言った。
「大丈夫。ただの仕事だ。パスタと、カツレツ……だったか。足りない材料があるかも知れない。ほんの数時間だ、買い物でも行ってくればいい」
「……うん」
それでも叶海が歯切れの悪い返事をすると、雪嗣はふっと目を細めて笑った。
「叶海の飯は美味いからな。楽しみにしている」
そしてそれだけ言い残すと、白衣を翻して襖の奥へと消えていった。
「ひい」
すると、間抜けな声を上げて、叶海はその場に蹲った。熱くなった頬を手で冷ましながら、脳内で今の雪嗣の言葉を反芻する。その刺激たるや凄まじいもので、思い返すだけで心臓が破裂しそうだ。
すると、一連の光景を眺めていた蒼空がしみじみと呟いた。
「塩対応の後の神対応……」
「……うう、ギャップ。ギャップがすごい……心臓にくる……」
「神だけにってツッコミ待ちだったんだが」
「そんな余裕あるわけないでしょう!?」
うつ伏せたまま、叶海は蒼空をじろりと睨む。そしておもむろに仰向けになると、ほうと熱い吐息を漏らし、両頬を手で押さえてうっとりと目を瞑った。
「さっきの言葉だけで、白飯三杯いけそう……」
「……なに馬鹿なこと言ってんだ、お前」
蒼空の呆れかえった声が響く。なにを言われようとも、叶海にとって雪嗣の褒め言葉はなによりの甘露だ。……ああ、今日一日は幸せな気分でいられそう。そんな予感を叶海が感じていると――その瞬間、すらりと襖が開いた。
「大丈夫。ただの仕事だ。パスタと、カツレツ……だったか。足りない材料があるかも知れない。ほんの数時間だ、買い物でも行ってくればいい」
「……うん」
それでも叶海が歯切れの悪い返事をすると、雪嗣はふっと目を細めて笑った。
「叶海の飯は美味いからな。楽しみにしている」
そしてそれだけ言い残すと、白衣を翻して襖の奥へと消えていった。
「ひい」
すると、間抜けな声を上げて、叶海はその場に蹲った。熱くなった頬を手で冷ましながら、脳内で今の雪嗣の言葉を反芻する。その刺激たるや凄まじいもので、思い返すだけで心臓が破裂しそうだ。
すると、一連の光景を眺めていた蒼空がしみじみと呟いた。
「塩対応の後の神対応……」
「……うう、ギャップ。ギャップがすごい……心臓にくる……」
「神だけにってツッコミ待ちだったんだが」
「そんな余裕あるわけないでしょう!?」
うつ伏せたまま、叶海は蒼空をじろりと睨む。そしておもむろに仰向けになると、ほうと熱い吐息を漏らし、両頬を手で押さえてうっとりと目を瞑った。
「さっきの言葉だけで、白飯三杯いけそう……」
「……なに馬鹿なこと言ってんだ、お前」
蒼空の呆れかえった声が響く。なにを言われようとも、叶海にとって雪嗣の褒め言葉はなによりの甘露だ。……ああ、今日一日は幸せな気分でいられそう。そんな予感を叶海が感じていると――その瞬間、すらりと襖が開いた。

