叶海は唇を尖らせると、大きくため息をつく。

 この光景は、ここ数ヶ月の間、毎朝繰り返されていた。

 叶海が告白して、雪嗣がすぐに断る。よもや、朝の定番となりつつある。
何度も何度も飽きずに繰り返される告白。しかし、雪嗣は叶海の告白を受け入れてくれなかった。

「いつも言ってるだろ? 俺は神で、叶海は人。婚姻なんて土台無理な話だ」

「そんなの! 神様と人間の婚姻なんてよく聞く話じゃない!」

 すると、雪嗣はくすりと笑みを零して、余裕のある表情のまま叶海の頭を撫でた。

「駄々をこねても駄目なものは駄目だ。聞き分けろ」

「また子ども扱いして……」

 叶海が唇を尖らせると、雪嗣は小さく肩を竦めた。

「俺は神だ。俺からしたら、人間なんて漏れなくお子様だ」

 ――アラサーになって子ども扱いとか!

 叶海はがっくり肩を落とすと、恨みがましい視線を雪嗣に向けた。