初夏の青々と澄んだ朝の空気に、雪嗣の白色が浮かび上がっているように見える。彼が纏う凜とした雰囲気はどこか涼やかで、夏の暑さを忘れさせてくれるようだ。

「よっし!」

 気合いを入れると、麦わら帽子の位置を手で直す。そして、今日一番の笑みを浮かべて駆け寄る。

「おはよう、結婚してください!」

 そして、元気いっぱいに朝一の求婚をした。

「駄目だ」

 しかし、雪嗣はすげなく断る。
 だが叶海はへこたれない。拳を握りしめると、悔しそうに目を瞑った。

「今日も駄目だったかー。残念。明日こそは!」

 すぐさま未来に願いを託した叶海に、雪嗣は呆れの混じった視線を向けている。

「叶海。いい加減、諦めるってことを覚えてくれないか」

「えっ、どうして? 雪嗣がまだ結婚を承諾してくれてないのに」

 叶海が首を傾げると、雪嗣はどこか遠くを見て黄昏れた。

「叶海の精神力ってすごいよな……」

「わ、雪嗣に褒められた!」

「褒めてない。断じて褒めてないぞ!」

「じゃあ結婚してください」

 勢いに任せてもう一度求婚する。

「駄目だって言ったよな……?」

 ……が、即座に断られてしまった。