指先に滑らかなものが触れた感触がする。叶海は、決意したかのように口を真一文字に結ぶと、それを背に隠して、ドキドキしながら雪嗣に向かい合う。
「……どうした?」
雪嗣が小さく首を傾げる。
春の柔らかな日差しを受けて、彼の絹糸のような白い髪が、きらりきらりと眩い光を辺りに反射している。少し前まで布で括られていたそれは、今はそのまま背中に流され、自由に風に靡いていた。
綺麗だなあ、と叶海は一瞬だけ見蕩れた。
そして反対の手で自分の胸を押さえると、そこに収まっているものを確認するかのように撫でる。きらきら、きらきら。今日も叶海の胸の中心には、雪嗣への想いが宝箱に納められて置かれている。しかしその中には、以前はなかったものが追加されていた。それは――春の訪れを告げる、可愛らしい梅の花だ。
「あのね、雪嗣。冬の間……いっぱい話し合ったでしょ? 実はさ、その時……言わなかったことがあって」
「なんだって?」
怪訝そうに眉を顰めた雪嗣に、叶海の心はすぐに及び腰になる。
けれど、懸命に自分の心を奮い立たせた叶海は、決して俯かないように、ただひたすら前を向くことだけを意識して話しを続けた。
それが――この事実を口にするのに、相応しい振る舞いだと思ったからだ。
「……どうした?」
雪嗣が小さく首を傾げる。
春の柔らかな日差しを受けて、彼の絹糸のような白い髪が、きらりきらりと眩い光を辺りに反射している。少し前まで布で括られていたそれは、今はそのまま背中に流され、自由に風に靡いていた。
綺麗だなあ、と叶海は一瞬だけ見蕩れた。
そして反対の手で自分の胸を押さえると、そこに収まっているものを確認するかのように撫でる。きらきら、きらきら。今日も叶海の胸の中心には、雪嗣への想いが宝箱に納められて置かれている。しかしその中には、以前はなかったものが追加されていた。それは――春の訪れを告げる、可愛らしい梅の花だ。
「あのね、雪嗣。冬の間……いっぱい話し合ったでしょ? 実はさ、その時……言わなかったことがあって」
「なんだって?」
怪訝そうに眉を顰めた雪嗣に、叶海の心はすぐに及び腰になる。
けれど、懸命に自分の心を奮い立たせた叶海は、決して俯かないように、ただひたすら前を向くことだけを意識して話しを続けた。
それが――この事実を口にするのに、相応しい振る舞いだと思ったからだ。