龍沖村は過疎化のために消滅の危機に瀕している。それは誰もが知ることだ。

 実はこの件に関しては、何年も前から問題視されていた。

 生ける神が棲まう村を……そして、龍脈の要所を守ってくれている神を失うべきではないと、蒼空の父親を初め、村を出て行った子ども世代たちが、多方面に呼びかけていたのだという。

 しかし、昨今の不景気や災害のこともあり、なかなか実現に至らないでいた。

 事態が急速に動き出したのは、ごくごく最近のことだ。

 きっかけは和則の死だった。

 村の合併に、一番意欲的だったのが和則だ。彼は過疎化による雪嗣の弱体化を、忙しい農業の合間を縫って訴え続けていた。しかし、なかなか問題が表面化しないせいで聞き入れて貰えず、ずっと悔しい思いをしてきたのだという。
 だが、状況は一変する。和則が死んだことで、雪嗣が一気に弱り、社焼失という事態に陥ったのだ。それを重く見た隣町議会は、龍沖村との合併を急ぐことを決めた。

 和則の悲願は、皮肉にも彼の死によって成就したのである。