――とまあ、こんな理由もあり。

 相思相愛になった二人は、周囲の視線を憚ることなくイチャイチャすることが多くなった。元々、幼馴染みであったこともあって、普通の男女の関係よりかは距離が近かったのにも拘わらず、恋人同士になったせいで更に密着度が増したのである。

 叶海としては、好きな人と触れ合えることは喜び以外のなにものでもなかったのだが、同じ幼馴染みの蒼空からすると、ふたりのいちゃつきは目の毒だったらしい。

「ああ……。俺も早く可愛い嫁さん見つけにゃ……」

 ここのところの蒼空は、どこかげんなりした様子だった。

 どうも、幼馴染みふたりの婚姻が決まったことで、父親からの結婚の催促が益々激しくなったからのようだ。蒼空自身も危機感を覚えているらしく、ここ最近は真面目に婚活に取り組んでいるらしい。

 しかし、寺の嫁というのは本当になり手がいないようで……。

 叶海たちの前では順調だと強がってはいるものの、実際は、哀しいほどに戦果は挙がっていないようである。

「そう言えば、蒼空。あの件はどうなった?」

 するとブツブツとぼやいていた蒼空に、雪嗣が訊ねた。

 蒼空は得意げに白い歯を見せ、グッと親指を立てて笑う。

「ああ……合併の件か。順調だぜ。このままいけば、実現はそう遠くない」

 蒼空の力強い言葉に、雪嗣はホッと胸を撫で下ろしたようだった。

 そんな未来の夫に、叶海は訊ねる。

「合併って?」

「そう言えば、お前に説明をしてなかったな」

 雪嗣は小さく笑みを零すと、蒼空がしようとしていることを説明し始めた。