あの日の一連の出来事は、すべて龍沖村の村人総出で仕掛けたものだった。

 陣頭指揮を執ったのは、幸恵とみつ江だ。

 蒼空から事情を聞き出し、雪嗣の状況を把握し、顔を見せなくなってしまった雪嗣をおびき出すために、知り合いの葬儀社も巻き込んで作戦を練った。

 叶海の身に起きた異変に関しては予想外だったが、結果的に叶海と雪嗣の問題が解決したので、村人たちの企みは成功したと言えるだろう。

 ……あれから、叶海は雪嗣に記憶を戻して貰った。

 何度か記憶が混乱することはあったが、なんとか平静を取り戻すことができた。

 とは言え、嫌だと言ったのに勝手に記憶を消した雪嗣への怒りは凄まじく、しばらく口を利かなかったが。

 ――冬の間、ふたりは何度も話し合った。

 雪嗣は、梅子と話したことを漏れなく打ち明け、叶海は自分が感じたことすべてを伝えた。なにせ事情が混み合っている。簡単に受け入れられるものではなかったのだ。

 その点、冬は話し合うのにおあつらえ向きだった。

 余計な音は雪が吸収してしまう静かな季節は、ともすれば無駄に熱くなりかけるふたりの頭を冷ますのに、丁度良かったからだ。

 そして、梅の花が散る頃――お互いに納得のいく結論に至ったふたりは、改めてお互いに求婚した。

『雪嗣、私をお嫁さんにして!』
『叶海、俺の嫁になってくれ』

 同時に言って、大笑いしたのは言うまでもない。

 結果、社の修繕が終わり次第、この場所で神前式を挙げる予定となっている。