――ああ! やっちゃった!

 叶海は、自分の口から考え事が漏れていたことに気が付くと、真っ赤になって慌て出した。

「あ、あああああっ! やだ、私ったら初対面の人になんてこと!」

 あまりの恥ずかしさに手で顔を覆ってしまった叶海に、雪嗣はしばらく考え事をしていたかと思うと、どこか躊躇いがちに訊ねた。

「……すまない。今の発言は、どう思ったから口にしたんだ?」

 ――水に流してくれないの、このイケメン!

 ただでさえ恥ずかしくて逃げ出したいのに、と叶海は涙目になる。

 しかし、雪嗣の真剣な眼差しを見つけると、うっと小さく呻いた。

「は、話さないと駄目です?」

「不躾で悪いとは思っている。だが、知りたいんだ」

「……ええと」

 イケメンの真摯な眼差しに、叶海はモジモジと指を絡ませた。しかし、ここは夢の中なのだし、と開き直った叶海は、ちろりと上目遣いで雪嗣を見つめながら言った。

「理由は自分でもよくわからないんですけど。雪嗣……さん? を見ていると、じんわりとここ(・・)が温かくなって」

 叶海は、とん、と自分の胸を指さすと、嬉しそうにはにかんだ。

「キラキラしたものが満たされてく感じがします。だから……傍にいるだけで幸せになれそうだなって……そんな予感がするんですよね。夢見がちって思うかも知れないですけど、つい……幸せな未来を想像しちゃう」

 それは、恋人として傍にいる未来。

 夫婦として同じ道を歩く未来。

 親として、子を育む未来。

 終わりを見つめて、残された時間を共に過ごす未来。

 そのどれもが、頭の先からつま先まで、幸福で満ちあふれるような未来だ。

「変な感じ。このまま傍にいたらきっと――あなたに恋をしてしまいそう」