――ああ、睫毛が長い。目が大きい。肌が滑らか。かっこいい。

 じん、と雪嗣の姿が胸に沁みて、叶海はほうと熱い吐息を漏らす。

「現実だったら最高だね。こんなイケメン、滅多にお目にかかれないもの」

 すると、雪嗣の額に角があるのに気が付いた叶海は、やはり、今見ているのは現実ではないのだと結論づけた。

 普通に考えて、角が生えている人間がいるはずないからだ。

「夢にしちゃ、やけにリアルだけど」

 叶海は雪嗣の顔や頭にベタベタ触った。そして、なるほど極上だと呟くと、ほんのり頬を染めている雪嗣に笑いかける。

「へへ、ここぞとばかりにいっぱい触っちゃった。ごめんなさい。ごちそうさま~」

「お前な……」

 雪嗣は、そんな叶海に呆れた視線を向けていた。

 それにしても――と、叶海は考える。

 この人を見ていると、どうしてこうも心の奥が温かくなるのだろう。

 容姿が好みとか、言動に痺れた、とかそういうことではない。

 そもそも、雪嗣なる人物を推し量るのに、絶対的に情報量が足りない。

 しかし、雪嗣の内から滲み出てくるなにかに惹き付けられる。よくわからない強い力が、この人だよと耳もとで囁いているようだ。

「こんな人と恋をしたら、素敵だろうな……」

 この……男性的なのに細くてたおやかな手で撫でられたら、あの夢で感じたような心地になれるのだろうか。

 叶海がそんな風に思っていると、みんなが自分を凝視しているのに気が付いた。
 雪嗣などは、まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているではないか。