「――わ。誰? この超絶イケメン」

 その男性の顔があまりにも整っていて、思わず間の抜けたことを口にする。

 美形に見つめられて羞恥心を覚えた叶海は、見慣れた顔を探して辺りを見回す。

 そして人々の中に蒼空を見つけると、ホッと胸を撫で下ろした。

「蒼空、どういうことか説明してよ!」

 するとそんな叶海の様子を見て、村人たちがざわめき立った。

「おい、雪嗣。まだ記憶を戻してねえのかよ」

「んだぞ、龍神様。早くせねば、叶海が……」

 青ざめた顔をした蒼空と幸恵は、雪嗣と呼ばれた男性を不安げに見つめている。

 雪嗣は鷹揚に頷くと、叶海の頭をポンと叩いた。

「意識があるうちじゃないと記憶を戻せないから、一旦起こしただけだ。安心しろ」

「ぬう。見知らぬイケメンが私の頭に触れている……」

 未だに状況が掴めていない叶海は、ブツブツとどうでもいいことを呟いた。

 そしてちらりと雪嗣の顔を見つめると、サッと目を逸らす。すると、そんな叶海の様子に気が付いた蒼空が声をかけた。

「どうしたんだよ。まだ具合が悪いとか――」

「い、いや! そうじゃないんだけど!」

 叶海は右手の手のひらを蒼空に向けて制止すると、ほんのりと頬を染めて言った。

「この人ね、夢の中で見た人と似てるんだよね。ああ、あの人ってこういう顔してたのかなあ……って思ってたの。もしかして、今も夢の中かな。現実逃避の続き?」

 すると雪嗣は、驚いたように榛色の瞳をパチパチと瞬いた。