龍沖村の村民にとって、龍神の存在は秘密でもなんでもない。

 雪嗣は神でありながら、同時に仲間でもあった。村民は誰もが雪嗣を親しい友人や、もしくは家族の一員のように思っていたし、雪嗣もそう思っている。

 ただし成人前の子どもや、龍沖村へ永住する気のない相手には秘密にしていた。神である雪嗣と共に生きるために、長年懸けて作り上げた村の掟のためだ。

 だからこそ、幼いままこの村を離れることになった叶海は、雪嗣が龍神であると知らずにいた。村で生きると決めた叶海に、村の年寄りたちはようやく雪嗣のことを打ち明けてくれたのだ。