「――は?」

 梅子の言葉に、一瞬、雪嗣の頭が真っ白になる。

「待ってくれ。どういうことだ……」

「単純な話だ。この娘は、オラの生まれ変わりでもなんでもねえ」

 梅子はなんでもないことのように言うと、寂しげに視線を地面に落とした。

「そもそも、本当に生まれ変われるだなんて思ってなかった。あの時は、死の間際で必死だったんだ。龍神様を誰にも盗られたくなくて、思わず言っちまった」

 すべては、自分の醜い感情から来た発言なのだと梅子は語った。

「綺麗じゃねえなあ。本当に人間の心ってもんは綺麗じゃねえ。見かけだけよくっても、結局は独占欲とか嫉妬とか、ドロドロしたもんが詰まってる。オラもそうだった。自分の発言が、龍神様にどう思われるかわかっていたのに」

 すると梅子は、三つ指を突くと、雪嗣に向かって頭を下げた。

「ごめんなさい。オラのせいで、龍神様を苦しめちまった」

「……っ!」

 雪嗣は小さく息を呑むと、混乱する頭で必死に考えた。

 叶海は梅子の生まれ変わりではなかった。

 ふたりの魂が似ているのは、完全に他人のそら似だったのだ。

 ――なんだ?

 その瞬間、猛烈な違和感が襲ってきて、雪嗣は思わず顔を顰めた。しかし、違和感の原因がどうにも理解できなくて、モヤモヤしたものだけが身体の内へ残る。

 ――だとしたら。どうして梅子はここにいる?

 雪嗣としては、叶海の身体を使って梅子がここにいる時点で、生まれ変わりは確定なのだと思っていた。しかし、本人は違うのだという。

 ――まずは状況を確認しなければ。

 気持ちを切り替えた雪嗣は、梅子をまっすぐに見つめた。