すると、村の中をある一団が進んでいるのに気が付いた。

「……どういうことだ！」

　その瞬間、雪嗣の髪が逆立った。

　勢いよく走り出し、高台から飛び降りる。眷属である水に呼びかけ、着地地点に雪を集めると、ぼふん、と飛び込んだ。

　粉雪が煙幕のように立ち上り、辺りが一面白く染まる。しかし、視界が塞がれようとも一切構わず、雪嗣は怒濤の勢いで雪上を駆けていく。

　――何故だ。誰が。どうして。

　雪嗣の頭は混乱の極地へ陥っていた。

　グルグルと疑問ばかりが頭の中を回っていて、正常な思考ができない。

　それだけ、雪嗣が目にしたものは衝撃的だったのだ。

「はあっ……はあっ……はあっ……」

　風のように村の中を駆け抜けた雪嗣は、目的の場所にたどり着くと、それらの行き先を遮るかのように立ちはだかった。そして滝のように流れる汗を袖で拭うと、雪で白く染め上げられた世界の中、夜の闇よりも濃い黒を纏った彼らを見つめた。