調子に乗った叶海がピースすると、和則は豪快に笑った。

「アッハッハ。叶海の描く絵が有名になりゃ、この村も、もっと賑わうべかなあ? 頼んだぞ、叶海。期待しとる。それに――」

 和則は日に焼けたシワシワの顔に、まるで大黒様みたいな笑みを浮かべた。

「龍神様もずっとおひとりじゃ寂しいべな。叶海がいたら、賑やかでいい」

 そう言って、いくつか叶海に野菜を持たせる。大きなきゅうり。真っ赤に熟れたトマト。慎ましやかなドレスを纏ったとうもろこし。夏の恵みたちからは、太陽の匂いがする。どうやら雪嗣へ持っていけということらしい。叶海はお礼を言うと、大きく手を振ってまた走り出した。

 目指すは、村を見下ろす山の上に建つ神社だ。