『このままじゃ、アイツが死んじまう』
しかし、雪嗣の脳内に充満しているのは、弱々しい幼馴染みの声だ。
それは雪嗣の心をざわつかせ、酷く落ち着かなくさせていた。
「くそっ! くそっ! くそっ!」
苛立ち任せに、雪を蹴散らしながら進む。
雪の重みにどんどんと体力が削られていくが、そんなものに構っている余裕はない。
「じゃあ、どうすればよかった。俺になにが出来る。こんな小さな村ひとつ、満足に守れない俺に一体なにが出来るって言うんだ!」
どん、と通りすがりの木の幹を叩く。すると、枝先を彩っていた雪化粧が落ちてきて、辺りが白く烟った。
「……答えを教えてくれよ。誰か導いてくれよ。正解の道だけを歩ませてくれ」
――神の癖に。
その瞬間、耳の奥で誰かの声が聞こえて、雪嗣は悔しげに奥歯を噛みしめた。
やがて、冷たい風が吹き付ける高台へと到着した。
心を静め、雪で埋もれそうになっている村の風景を眺める。
目を皿にするように村中を見渡していた雪嗣だったが、和則の家に目を止めると、途端に表情を曇らせた。
「……和則が生きていたら、情けないと怒られそうだな」
遠い日、罠を持ち出した時に和則に怒られたのを思い出す。
「あれは本当に怖かった……」
苦笑を漏らした雪嗣は、じんわりと涙を浮かべた。
そして、ゴシゴシと袖で涙を拭うと、深く嘆息した。
「ああ、すっかり涙もろくなってしまった。こんな姿、氏子に見せられない……」
大きく息を吸うと、気持ちを切り替えて他へ視線を移す。
しかし、雪嗣の脳内に充満しているのは、弱々しい幼馴染みの声だ。
それは雪嗣の心をざわつかせ、酷く落ち着かなくさせていた。
「くそっ! くそっ! くそっ!」
苛立ち任せに、雪を蹴散らしながら進む。
雪の重みにどんどんと体力が削られていくが、そんなものに構っている余裕はない。
「じゃあ、どうすればよかった。俺になにが出来る。こんな小さな村ひとつ、満足に守れない俺に一体なにが出来るって言うんだ!」
どん、と通りすがりの木の幹を叩く。すると、枝先を彩っていた雪化粧が落ちてきて、辺りが白く烟った。
「……答えを教えてくれよ。誰か導いてくれよ。正解の道だけを歩ませてくれ」
――神の癖に。
その瞬間、耳の奥で誰かの声が聞こえて、雪嗣は悔しげに奥歯を噛みしめた。
やがて、冷たい風が吹き付ける高台へと到着した。
心を静め、雪で埋もれそうになっている村の風景を眺める。
目を皿にするように村中を見渡していた雪嗣だったが、和則の家に目を止めると、途端に表情を曇らせた。
「……和則が生きていたら、情けないと怒られそうだな」
遠い日、罠を持ち出した時に和則に怒られたのを思い出す。
「あれは本当に怖かった……」
苦笑を漏らした雪嗣は、じんわりと涙を浮かべた。
そして、ゴシゴシと袖で涙を拭うと、深く嘆息した。
「ああ、すっかり涙もろくなってしまった。こんな姿、氏子に見せられない……」
大きく息を吸うと、気持ちを切り替えて他へ視線を移す。

