「……っ!」
その瞬間、叶海は跳ね起きた。
「ふはっ……! はあ……はあ……はあ……っ」
そして、勢いよく胸いっぱいに息を吸う。なりふり構わず両腕を動かし、溺れないように藻掻いて――そこが、自分の寝室であることにようやく気が付いた。
「……ああ。そっか。そうだった」
肩を揺らし、汗で濡れた額を拭う。動揺のあまり、視界が上手く定まらない。
「夢。そうだ。夢だ。生きてる。私……生きてる」
自分が自分であるか不安になり、叶海は己を両腕で抱きしめる。
そして、手のひらに自分の体温を感じて、心底安堵した。
「おおい、叶海。起きてるか」
すると、部屋の外から蒼空の声がした。
こんな夜中にどうして彼が……と不安になって窓の外を見る。
すると思いのほか外が眩しくて、堪らず目を眇めた。
長い間眠っていたような気がしたが、どうやらそれほど時間は経っていないらしい。
「叶海、お前に頼みたいことがあるんだ。おい……」
「ま、待って。起きてるよ。起きてるから……」
叶海はノロノロと布団から起き上がると、寝間着が汗で重くなっているのに気が付いて、顔を顰めた。たとえ幼馴染みといえども、この恰好で会うのは流石に憚られる。
そう思った叶海は、おもむろに箪笥へ向かった。
「……うっ」
その瞬間、また激しい頭痛に見舞われた。
「うう。うううう……っ!」
叶海はその場に蹲ると、頭を押さえてうめき声を上げる。
それは、今までで一番の痛みだった。まるで、脳を熱した鉄棒でかき混ぜられているような激しい痛みに嘔吐く。
「おい!? 叶海? 叶海……!?」
蒼空の声が聞こえる。しかし、あまりの痛さにそのまま床に寝転ぶ。
――ああ。私、死ぬのかも。
床の冷たさを頬で感じながら、叶海はぼんやりとそんなことを思った。
さっき夢の中で死んだばかりだというのに、また死ぬとはなんてことだろう。
叶海はさざ波のように襲い来る痛みに耐えながら、あんまりだと嘆く。
その時、叶海の脳裏に浮かんでいたのは、顔も名前も知らない男性のことだ。
夢の中の相手だというのに、叶海はその人に会いたくて、その人に助けて欲しくて仕方がなかった。
「やだ。やだよ……死にたくない。神様……」
ボロボロと涙を零しながら必死に手を伸ばす。
その先に誰かがいるわけではない。けれど、手を伸ばせば――誰かが、このどうしようもない自分に手を差し伸べてくれる気がしたのだ。
「神様はここにはいねえべ」
するとその時、どこか聞き覚えのある声がした。
涙で滲む視界の中、痛みで朦朧としながら、目線だけでその人物を探す。
すると突然、氷のように冷たい手が叶海の手を握った。
そしてその人物は、叶海の顔を覗き込むと、そばかすが散った顔ににんまりと妖しげな笑みを浮かべた。
「なあ、お前。ちょっくらオラと変わってけろ」
その瞬間、更に強烈な頭痛が叶海を襲う。
ブツン、ブツン、と耳の奥でなにかが千切れる音がする。助けを呼ばなければと思うものの、叶海はあまりの痛みに耐えかねて、そのまま意識を手放したのだった。
その瞬間、叶海は跳ね起きた。
「ふはっ……! はあ……はあ……はあ……っ」
そして、勢いよく胸いっぱいに息を吸う。なりふり構わず両腕を動かし、溺れないように藻掻いて――そこが、自分の寝室であることにようやく気が付いた。
「……ああ。そっか。そうだった」
肩を揺らし、汗で濡れた額を拭う。動揺のあまり、視界が上手く定まらない。
「夢。そうだ。夢だ。生きてる。私……生きてる」
自分が自分であるか不安になり、叶海は己を両腕で抱きしめる。
そして、手のひらに自分の体温を感じて、心底安堵した。
「おおい、叶海。起きてるか」
すると、部屋の外から蒼空の声がした。
こんな夜中にどうして彼が……と不安になって窓の外を見る。
すると思いのほか外が眩しくて、堪らず目を眇めた。
長い間眠っていたような気がしたが、どうやらそれほど時間は経っていないらしい。
「叶海、お前に頼みたいことがあるんだ。おい……」
「ま、待って。起きてるよ。起きてるから……」
叶海はノロノロと布団から起き上がると、寝間着が汗で重くなっているのに気が付いて、顔を顰めた。たとえ幼馴染みといえども、この恰好で会うのは流石に憚られる。
そう思った叶海は、おもむろに箪笥へ向かった。
「……うっ」
その瞬間、また激しい頭痛に見舞われた。
「うう。うううう……っ!」
叶海はその場に蹲ると、頭を押さえてうめき声を上げる。
それは、今までで一番の痛みだった。まるで、脳を熱した鉄棒でかき混ぜられているような激しい痛みに嘔吐く。
「おい!? 叶海? 叶海……!?」
蒼空の声が聞こえる。しかし、あまりの痛さにそのまま床に寝転ぶ。
――ああ。私、死ぬのかも。
床の冷たさを頬で感じながら、叶海はぼんやりとそんなことを思った。
さっき夢の中で死んだばかりだというのに、また死ぬとはなんてことだろう。
叶海はさざ波のように襲い来る痛みに耐えながら、あんまりだと嘆く。
その時、叶海の脳裏に浮かんでいたのは、顔も名前も知らない男性のことだ。
夢の中の相手だというのに、叶海はその人に会いたくて、その人に助けて欲しくて仕方がなかった。
「やだ。やだよ……死にたくない。神様……」
ボロボロと涙を零しながら必死に手を伸ばす。
その先に誰かがいるわけではない。けれど、手を伸ばせば――誰かが、このどうしようもない自分に手を差し伸べてくれる気がしたのだ。
「神様はここにはいねえべ」
するとその時、どこか聞き覚えのある声がした。
涙で滲む視界の中、痛みで朦朧としながら、目線だけでその人物を探す。
すると突然、氷のように冷たい手が叶海の手を握った。
そしてその人物は、叶海の顔を覗き込むと、そばかすが散った顔ににんまりと妖しげな笑みを浮かべた。
「なあ、お前。ちょっくらオラと変わってけろ」
その瞬間、更に強烈な頭痛が叶海を襲う。
ブツン、ブツン、と耳の奥でなにかが千切れる音がする。助けを呼ばなければと思うものの、叶海はあまりの痛みに耐えかねて、そのまま意識を手放したのだった。

