夢の中の自分と、それを見ている自分に、ズレが起きてきている。
夢の中で叶海として現れている人物は、実は他人なのではないか――? そんな疑問が募っていく。
それが事実ならば、まるで拷問にも等しいことだ。
只々、延々と――他人の幸せを見せつけられる。
彼から注がれる視線も、触れた温もりも、かすかに聞こえてくる吐息も、彼の全身から発せられている温かな愛情も。すべてが、まるで自分のことのように生々しく感じられるというのに、それは決して自分のものにはならないのだ。
――せめて、映画のようだったらよかったのに。
それはここ最近、叶海がよく考えていることだった。
聴覚と視覚だけの夢だったならば、どんなにか楽だったろう。
それならば、叶海は傍観者でいられた。目の前でなにが起きようとも、ただの夢なのだと冷静でいられた。でも――。
『俺たちは夫婦になるんだろう? なら、これくらいのことどうってことない』
……どうして、彼の言葉ひとつひとつに、こんなにも胸が高鳴るのか。
ああ、手に汗が滲む。顔が燃えるように熱い。隣にいる彼に触れたい。
そっと指先で彼の手に触れる。なんてことだろう、彼がそっぽを向いたまま、叶海の手を握り返してくれた。ああ! 幸せで全身が蕩けてしまいそうだ――。
――しかし、これは私の身に起きたことじゃない。
ふとした瞬間に正気に戻されて、叶海の心はどん底まで落とされる。
が、それでも彼と一緒にいたかった叶海は、とろとろと夢の続きを見続けた。
すると、夢の内容が徐々に変わって行った。
初めは、日常の場面を切り取ったものが多かったのに、穏やかさとは縁遠い場面が多く現れるようになる。
次に現れたのは、狭苦しい土間だ。
夢の中で叶海として現れている人物は、実は他人なのではないか――? そんな疑問が募っていく。
それが事実ならば、まるで拷問にも等しいことだ。
只々、延々と――他人の幸せを見せつけられる。
彼から注がれる視線も、触れた温もりも、かすかに聞こえてくる吐息も、彼の全身から発せられている温かな愛情も。すべてが、まるで自分のことのように生々しく感じられるというのに、それは決して自分のものにはならないのだ。
――せめて、映画のようだったらよかったのに。
それはここ最近、叶海がよく考えていることだった。
聴覚と視覚だけの夢だったならば、どんなにか楽だったろう。
それならば、叶海は傍観者でいられた。目の前でなにが起きようとも、ただの夢なのだと冷静でいられた。でも――。
『俺たちは夫婦になるんだろう? なら、これくらいのことどうってことない』
……どうして、彼の言葉ひとつひとつに、こんなにも胸が高鳴るのか。
ああ、手に汗が滲む。顔が燃えるように熱い。隣にいる彼に触れたい。
そっと指先で彼の手に触れる。なんてことだろう、彼がそっぽを向いたまま、叶海の手を握り返してくれた。ああ! 幸せで全身が蕩けてしまいそうだ――。
――しかし、これは私の身に起きたことじゃない。
ふとした瞬間に正気に戻されて、叶海の心はどん底まで落とされる。
が、それでも彼と一緒にいたかった叶海は、とろとろと夢の続きを見続けた。
すると、夢の内容が徐々に変わって行った。
初めは、日常の場面を切り取ったものが多かったのに、穏やかさとは縁遠い場面が多く現れるようになる。
次に現れたのは、狭苦しい土間だ。

