雪嗣を見ると、胸がじんと熱くなる。涙が零れそうになる。話したい、触れたい、見て欲しい、一緒にいたい。その感情は理屈じゃ説明つかなかった。彼を求める強い気持ちが溢れて、叫び出したくなるくらいだったから。

 ――私は、今の雪嗣のどこが好きなのだろう。

 綺麗な顔? 優しい眼差し? 幼い頃の思い出? 彼が神様だったこと?

 それ以外に価値を見いだすには、叶海は今の雪嗣のことをあまりにも知らない。

 けれど、確実に彼に惹かれていることは事実だ。言うなれば一目惚れ。まるで磁石が対極に引かれるように、心が惹き付けられている。そんな奇妙な状態だった。

 理由もなく相手に惹かれることは、叶海からすると少し不安なことだ。

なにせ、今の彼女が生きている大人の世界(・・・・・)は、何事にも説明が求められ、曖昧ですまされることはそう多くない。

 朝目覚めて、自分の心を確認する。ああ、今日も雪嗣が好きだ。

 叶海はほうと息を漏らすと動き出した。

 今日こそ雪嗣を好きな理由が見つかるだろうか。
 この恋心に説明をつけられるだろうか。
 私の初恋は成就するのだろうか。

 ……そんな風に思いながら。