――どうしよう……!

 だから叶海は心底困り果ててしまった。

 テレビドラマであれば、優しい幼馴染みに泣きつくところなのだろうが……。

 ――いやいやいや。それはない!

 それに、蒼空は叶海にとって大切な存在だ。

 気兼ねなく穏やかに、そして楽しく過ごせる貴重な相手。
 雪嗣との関係がギクシャクしている今、なおさらその関係を壊したくない。

「蒼空……あのね」

 だから、叶海は言葉を慎重に選びつつも、蒼空を見つめた。

 どうすれば蒼空を傷つけずに済むか、叶海の頭はそのことでいっぱいだ。

「……プッ」

 するとその時、突然蒼空が顔を逸らした。

 細かく肩を揺らし、笑うのを必死に堪えている。

 ――揶揄ったのね!

「~~っ! 冗談はよしてよ、もう!」

 叶海が怒りを露わにすると、蒼空は顔を背けたまま、手をヒラヒラ振った。

 狭い自動販売機コーナーに響く蒼空の笑い声に、叶海はブスッと不機嫌そうに唇を尖らせると、テーブルに肘を突いてぼやく。