叶海と蒼空がやって来たのは、とある動植物園だ。

 近隣の小学校の遠足と言えばここ、と言われるほどの場所で、叶海たちも小学校の頃に訪れたことがある。園内にはバラ園などの温室、それに動物の展示がされていて、市民の憩いの場として親しまれていた。

 今日ここに来たのは、和則の葬儀も一段落したので、蒼空が気晴らしにどうだと叶海を誘ったのだ。時間があるわけではなかったが、叶海自身、仕事がかなり煮詰まっていたので、すぐに快諾した。

 久しぶりに訪れる動植物園。叶海は今日この時を楽しみにしていたのだが、冬目前ということもあり客はまばらだった。しかも、記憶にあるよりも随分と寂れた光景に、がっくりと肩を落とす。

「なんか……微妙」

 すると、バイクを停めてきた蒼空が眉をつり上げた。

「悪かったな。都会と違って、オシャレなカフェなんてねえんだよ。文句言うなら帰るか?」

「うっ。嘘です。連れてきてくれてありがとう、蒼空」

 慌てて叶海が謝罪すると、蒼空はクツクツ喉の奥で笑って、大きな手で頭を叩く。

 すると、叶海は益々唇を尖らせた。

「……同い年の癖に。子ども扱いしないでくれる?」

「精神年齢が違ぇんだよ、精神年齢が」

「そんなことないし」