「愚かな……本当に愚かすぎる」

 昨日の自分を思い出すと、反吐が出そうになる。

 今まで、頭のどこかで梅子の生まれ変わりだと信じていながらも、雪嗣は一線を越えることはしないでいた。そのことが、叶海にとってどんなに残酷なことであるか、雪嗣自身理解していたからだ。

 なのに――。

『――たとえ死んだって、この気持ちは変わらない。生まれ変わっても、私はきっと雪嗣を好きになるんだろうな』

 叶海の言葉を聞いた瞬間、箍が外れてしまった。

 欲望を身勝手に突きつけて、叶海を傷つけてしまった。

「どうしてあんなこと」

 雪嗣は、叶海に梅子のことを伝えるつもりはなかった。たとえ彼女が梅子の生まれ変わりだったとしても、叶海が梅子そのものになるわけではない。そんなこと、幼馴染みとして一緒に過ごしてきた時間の中で、とっくに気が付いていたからだ。

 だから、このことは誰にも話すつもりはなかった。

 世話人の蒼空にすらも。なのにこの有様だ。