叶海と過ごす時間――それは、雪嗣にとって不思議なほどに心地のいいものだった。

 彼女の創り出す場の雰囲気、かけてくれる言葉、笑わずにいられないほどの陽気な性格、叶海が与えてくれるすべてが、まるで太陽の光のようにじんわりと雪嗣の心を温めて、解してくれる。

 そう、それはまるで――梅子と過ごしていたあの頃によく似ていた。

 自分の心をこれほどまでに動かす存在。それは、今まで梅子だけだったのだ。

 だから魂が似ていることも相まって、彼女がかつての婚約者ではないかと考えた。

 何度、彼女の求婚を受け入れてしまおうと思っただろう。

 しかし、それはすんでの所で耐えた。万が一のことがあってはいけない。

 絶対に梅子を裏切ってはいけない。

 神が間違いを起こすことは許されないのだから。

 だから、押しかけてきた叶海を追い出さず、曖昧な関係のまま今日この日まできてしまった。適当な理由をつけて追い返していたのなら、こんなことにはならなかったかもしれないのに、だ。