『龍神様、腹減ってるだか? 握り飯、作ってきたからな。たんと食え』
こう言って、食事時になれば容赦なく押しかける。
更には着物を直すと家に長時間居座り、雪嗣を呆れさせた。
『ほれ、貸してみろ、オラ裁縫は得意なんだ。なんだその目、こないだの握り飯がしょっぱかったからって、信じてねえべ……!?』
仕舞いには好き勝手に甲斐甲斐しく世話を焼き、文句を垂れる。
『あらまあ、こんなに洗濯物貯め込んで! 家も埃まみれじゃねえか。まったく龍神様は、オラがいねえと駄目だなあ』
時には綺麗な景色を観に行こうと、雪嗣を外へ連れ出した。
『ああ、今日も綺麗な月だなあ。龍神様もそう思うべ?』
『……そうだな。まったく、梅子は本当に困った奴だ』
梅子のことを初めは煩わしく思っていた雪嗣だったが、彼女の健気さと、天真爛漫さに徐々に惹かれていった。村の祭りで『贄さん』役に選ばれた梅子の美しさに、雪嗣が魅了されてしまったということもある。
ふたりは順調に距離を縮めていった。そして、梅子が余所の男のところへ嫁がされそうになったのがきっかけで、ふたりは夫婦になることを約束したのだ。
そんな梅子が口にした言葉の中で、強く印象に残っているものがある。
結婚の約束をした後、梅子の父親がなかなかふたりの婚姻を認めてくれない中、彼女は何度も何度もこう繰り返した。
『オラ、絶対に龍神様のお嫁になる。たとえ今生で無理だったとしても、だ』
ほんのり顔を赤く染めた梅子は、雪嗣の手に頬ずりをして、まるで夢見るようにこう言った。
『――たとえ死んだって、この気持ちは変わらない。生まれ変わっても、オラはきっと龍神様を好きになる』
こう言って、食事時になれば容赦なく押しかける。
更には着物を直すと家に長時間居座り、雪嗣を呆れさせた。
『ほれ、貸してみろ、オラ裁縫は得意なんだ。なんだその目、こないだの握り飯がしょっぱかったからって、信じてねえべ……!?』
仕舞いには好き勝手に甲斐甲斐しく世話を焼き、文句を垂れる。
『あらまあ、こんなに洗濯物貯め込んで! 家も埃まみれじゃねえか。まったく龍神様は、オラがいねえと駄目だなあ』
時には綺麗な景色を観に行こうと、雪嗣を外へ連れ出した。
『ああ、今日も綺麗な月だなあ。龍神様もそう思うべ?』
『……そうだな。まったく、梅子は本当に困った奴だ』
梅子のことを初めは煩わしく思っていた雪嗣だったが、彼女の健気さと、天真爛漫さに徐々に惹かれていった。村の祭りで『贄さん』役に選ばれた梅子の美しさに、雪嗣が魅了されてしまったということもある。
ふたりは順調に距離を縮めていった。そして、梅子が余所の男のところへ嫁がされそうになったのがきっかけで、ふたりは夫婦になることを約束したのだ。
そんな梅子が口にした言葉の中で、強く印象に残っているものがある。
結婚の約束をした後、梅子の父親がなかなかふたりの婚姻を認めてくれない中、彼女は何度も何度もこう繰り返した。
『オラ、絶対に龍神様のお嫁になる。たとえ今生で無理だったとしても、だ』
ほんのり顔を赤く染めた梅子は、雪嗣の手に頬ずりをして、まるで夢見るようにこう言った。
『――たとえ死んだって、この気持ちは変わらない。生まれ変わっても、オラはきっと龍神様を好きになる』

