「正直に言ってみよう。今日の私、どうよ!?」

「ブッ……!」

 その瞬間、蒼空が噴き出した。

「叶海、情緒もクソもねえな。アハハハハ!」

 蒼空は、叶海の言葉に色気がないとひとり大笑いしている。叶海はそれを丸々無視して、雪嗣に真摯な眼差しを向け続けた。

 すると、しばらく黙り込んでいた雪嗣は、観念したように長く息を吐くと、やたらと小さな声で言った。

「……き、綺麗、だとは思う」

 その瞬間、叶海はプルプルと小さく震えると、天に向かって拳を突き上げた。

「やったよお婆ちゃん! 雪嗣を見蕩れさせてやった……!」

「なにを馬鹿なことを叫んでるんだ、なにを!」

 涙目の雪嗣を無視して、遠くで様子を見守ってくれていた祖母の幸恵に、親指を突き立てる。すると、心配そうに孫の様子を見守っていた幸恵は、カラカラ笑って手を叩いた。

「よかったなあ。叶海」

「うんほんと! 快挙だよこれは! てか、見蕩れられてる事実に気が付かない私って、ちょっとやばくない? 蒼空グッジョブ!」

「普段フラれてばっかりだからなあ。脳が受け付けなかったんだ。憐れだな……」

「やっぱり黙ってて、生臭坊主!」

 すると今まで黙って様子を見守っていた村人たちが、ワッと賑やかな声を上げた。

「よくやった、叶海!」

「念願叶ったなあ。これでもう心残りねえべ」

「んだんだ。明日死んでも大丈夫だな」

「待って、縁起でもないこと言わないでくれる!?」

「ワハハハハハハ!」

 一気に、その場が笑いの渦に包まれる。叶海も釣られて笑うと、真っ赤な顔のまま不機嫌そうに頬杖をついている雪嗣に言った。