「俺の正体を知られたからには放って置けない。悪いけど記憶を消させて貰う」

 そして、どこか儚げに……寂しそうに笑ったのだ。

 その瞬間、叶海の身体に電撃が走った。

 ――ああ。ああ! この人……なんて顔をするの(・・・・・・・・)

 それは、叶海が夢で何度も見た笑顔。

『俺は……どこにもいかない。ずっとここにいるから』

 そう言って、別れ際に雪嗣が浮かべたのと同じもの。

 できることなら慰めてやりたいと、何度も何度も叶海が夢想した表情――!

 ……それが今、手の届く場所にある。

 途端、まるで糸が切れた人形のように叶海が脱力した。