それからは、妖狐と名乗るには聞いて呆れるほど、私はとても弱い妖怪に成り果て、人間から離れた山の中でひそかに暮らしていた。
 誰かに期待されたのに裏切ってしまうこと、誰かに傷つけられることがとても恐ろしくなった。たとえ同じ妖怪でも、どこか一線を引いて離れて見るようになった。何より、次第に妖力が弱くなっていき、この世から消えるのも時間の問題だったのが、正直な話だ。

 このまま何事もなかったように消えていけばいい。ずっとそう願っていた。

 ――あの日までは。