人間は儚くて脆い。
 自分たちが窮地に立たされたとき、神に祈りを捧げ、生まれたものを称え、祀る。そうして安心感を得たところを狙ったかのように、災害が起きた。
 人々は皆、「神様が裏切った」と口々に言い合い、祀っていたものを引きずり出し、痛めつけ、疫病神だと罵った。

 私も以前、ある村の守り神として生まれた狐だった。大して守れるようなことはできなかったのに、村人は私をよくしてくれた。不作の時期にも関わらず、いつも供え物を祠の前に置いてくれた。
 何か恩を返したい。――そう思った私は、膨大な妖力と引き換えに、村に雨を降らすよう、山奥の水源に住まう蛇神(へびがみ)と取引をした。
 気に食わない奴だったが、蛇神は取引に応じて、村に雨を降らせてくれた。村人はとても喜んだ。

 ……そんな喜びも、それっきりだった。