は?
それを聞いて、私は愕然とした。
まさかここで「お前が謝れ」と言われるとは思っていなかった。今まで店長がしてきた食材管理も営業中の様子も、ほとんど店長の作り話だということも、伝えられるものはすべて伝えたつもりだった。
それなのに、何も伝わってない。
「……それは、辞めたくなければ頭を下げろってことですか?」
「そうだね、ちゃんと思いを伝えればわかってくれるんじゃないかなって。
話が通じない人じゃないじゃない? 僕はこの店のことを見てないからわからないけど、僕が見てきた店長はそんな簡単に人を辞めさせるような人じゃない。店舗のスタッフ皆が働きやすいように、仕事をしてくれているんだよ?
久野さんが知らないだけで、あの人はよく頑張ってくれている。
前の店長もそうだよ。僕にはパワハラをするような人には見えなかった。すごく前向きに仕事に取り組んでいたんだ。
貴女は、彼らの一部部分しか見ていないのに、パワハラだと通達するのかい?
……違うよね。それを何も知らない貴女の一方的な理由だけで否定することは宜しくないね。
個人的な理由で嫌うのは勝手だけど、それを仕事に持ち込まないでくれる? 嫌な上司はいるだろうけど、これは仕事なんだから」
私情を持ち込んでいるのはそっちでしょ。
確かに営業中にふざけていた部分はあったかもしれない。アルバイトの立場で口出ししたことも悪かったかもしれない。言い過ぎたことも自分でわかってたけど、今まで何も言われてこなかった。私自身が注意すればよかった部分でもあるけど、社員ましてや店長が指摘すればすぐ解決した話でもある。
それでもありもしない噂をでっち上げる自分勝手な店長と、店のことを放ったらかしにして現状を理解しないマネージャーに頭を下げろ?
それが私にとって必要なことだって、どうしてこの人が決めるの?
そこまでしてここに残る理由ってなに?
こんな人達のために会社に尽くす私の価値ってなに?
「……頭を下げて勤務態度を改めたら、残れますか」
「それはわからないけど、僕から頭を下げてみますよ。最終的には店長の判断がすべてですから」
靄がだんだん濃くなっていく。気持ち悪くなって思わず俯いた。
私はせめて次の店を決める期間として三カ月は残らせてほしい、と伝えたうえで頭を下げる。仕事の開始時間になって席を立った。