のぞみが赤くなってうつむくと、頭の上で男性がくすりと笑った気配がした。
「君はかの子の母親に少し似ているかもしれないね。間違えたというわけではないだろうけど…」
 そこまで言われて、のぞみは「あっ!」と声をあげる。
「その子…お母さんは、お仕事って言ってました。あの、もしかしてお父さん…ですか?」
 彼が父親だというならば女の子の言動には納得がいく。母親が仕事をしている間は父親が面倒をみているということだろう。
 それにしてもこのイケメンが子持ちだというのは少し…いやかなり残念な気もするが。
 のぞみの問いかけに再び男性がくすりと笑った。
「いいや、私はかの子の父親ではないよ。この子の母親が仕事に出ている間、お預かりしているんだ。上の神社でね」
「上の神社で…?」
 呟いてのぞみは鳥居を見上げる。
 いつのまにか、少しだけ日が陰りはじめていた。
「それより君はここで何をしているの? この神社には街の人はあまり来ないのに」