いつのまにか鳥居とは反対側の森の際に、小学生くらいの女の子が立っている。
 かの子が、「お母さん!」と言って走りだした。ということは彼女がかの子の母親なのだ。幸いぞぞぞとはこなかった。だがその代わり、なんというか…少し驚いてのぞみは言葉を失った。
 かの子の母親のはずなのに、完全に見た目が少女だったからだ。考えてみれば座敷童子は子どものあやかし、母親になっても見た目はそう変わらないということか。それにしても妖怪図鑑で見た座敷童子とは随分様子が違うとのぞみは思う。
 図鑑に載っていた座敷童子は、着物を着ておかっぱ頭で、そうちょうど目の前にいるかの子のような格好だった。
 ところが目の前の座敷童子は、年齢は十歳前後の子どもではあるものの、肩より下の髪はふわふわと巻いて、膝丈の花柄ワンピースの上にカーディガン、エナメルのサンダルにブランドバックまで持っているではないか。
 まるでちょっとおしゃれな子役タレントのようだ。