のぞみはわかりましたと言いかけて、少し考えてから恐る恐る口を開いた。
「あの…、掃除をかの子ちゃんと一緒にやってもいいですか?」
「…掃除を?」
 のぞみは遠慮がちに頷いた。
「あぁやって、ただじっとしてお母さんを待つのってとても長い時間に感じるんじゃないかと思って…。何かやってれば気が紛れるかなぁって…」
 実習で行った保育園にも、預けられて泣く子はいた。でも大抵は、園で他の子や先生と過ごすことに慣れれば、泣かなくなるのだ。
 親と離れるのが寂しいのは当たり前だけれど保育園にも楽しいことがあるのだとわかれば…。でもあの状態のまま、かの子を放っておいたらそんな日はずっとこないような気がする。
 人間の保育園なら先生が声をかけてお友だちができるようにお手伝いするのだとしても、ここはあやかしの保育園だから、何が正解かはわからない。新入りのくせに余計なことを言うなと思われたかもしれないとのぞみは少し不安になった。
 一方でサケ子の方は、べつにそれほど頓着はせずに、「あんたが、めんどくさくなきゃどうぞ」と言った。