「さぁさ、そのくらいにして早く食べとくれ!」
 弁当を全て並び終えたサケ子が、パンパンと手を叩いて声を張り上げると子どもたちは、素直に従った。
「いただきまぁす!」
 皆がいっせいに手を合わせるのに少し遅れてかの子も席に着く。それを視線で追って少し安堵したのぞみの肩をサケ子が叩いた。
「悪いけど、のぞみはここで子どもたちと食べてくれない? 私は事務所で食べるよ。私が一緒に食べると子どもたちが泣くんだ」
 わかりましたと頷きながらものぞみは首を傾げる。
 一緒に食べると子どもたちが泣く?
 サケ子はそんなのぞみに涼しげな目元を細めてふふふと笑う。そして口元を覆っている布を指さした。
「わけを知りたい?」
 のぞみは何やら背筋がむずむずとするのを感じていた。そういえば見た目は普通の綺麗なお姉さんにしか見えないサケ子は、いったい何のあやかしなんだろう。変わったところといえば口元を布で覆っていることくらいで…。