そして下駄を鳴らして、階段をゆっくりと下りてくるとぐずぐずと泣きじゃくる女の子を抱き上げた。
「こんなところにいたんだね、かの子。勝手に出てったらダメじゃないか。…心配したよ」
 のぞみはそれを唖然として彼を見つめる。さっきまであれほど見回しても誰もいなかったというのに、この男の人はどこから来たのだろう?
 方向からして神社の方だということは分かったが、それにしても全く気配を感じなかった。
 一方で、女の子は男性に抱き上げられて、まだぐずぐずとしながらも少し落ち着いたようだった。
 男性がのぞみを見て微笑んだ。
「かの子を引き止めてくれてありがとう。階段を下りてしまっていたら大変なことになるところだった」
「い、いいえ!」
 のぞみの胸が急にどきどきと音を立てて鳴り出した。
「私はべつに…」
 階段を下りてくるときは逆光になっていて気がつかなかったけれど、よく見るとすごくイケメンだ。すらりと背が高くて涼やかな顔立ち、だけど切れ長の目がとても印象的で…。