サケ子が「はいはい」と言って出てきた扉の奥を見て、のぞみはまたもやびっくり仰天してしまう。ものすごく狭い部屋ではあるものの、ちゃんとデスクと椅子があって電話とパソコンまであるではないか。でもあやかしが、パソコンを?しかも役所へ届け出るって…まさか、ここは…。
「…認可保育園なんですか?」
「そうだよ」
 紅が振り返って当然じゃないかという表情で言った。
「でも…だって…」
 あやかしの保育園なのに?
「もちろん、あやかしの子を預かっていることは内緒だよ。それ以外にもいろいろ誤魔化していることもあるけど」
 そう言って紅はふふふと笑った
 でも…とのぞみは思う。それの何にメリットがあるのだろう?認可保育園なら役所から人が来ることもあるだろうし、それなりリスクがありそうだ。そんなのぞみの疑問はいつものことだが紅にはお見通しのようだった。
 ひょいと肩を竦めると、「運営費をもらえるじゃないか」と言った。