そう言ってもうひと口ちぎって食べた。どうやら"ぞぞぞ"は食べきらなくても、紅がうなじから離してくれた時点で恐怖心はなくなるようだとのぞみは心のメモに書き留める。何もかも知らないことばかりだから、一つ一つ覚えておかなくては。
「…それより、悪いあやかしというのは何ですか?」
のぞみの問いかけが聞こえているはずの紅が切れ長の目をすっと逸らした。そして気まずそうにもぐもぐと口を動かしている。
ここに来るあやかしは、たましいをとったり人を傷つけたりしないと言ったくせにとのぞみは、少し腹が立った。また口から出まかせを言って騙したな。
「悪いあやかしがいるんですか?」
再び尋ねるが、紅はあさっての方向を向いたままだ。そんな彼に苛立ちを募らせて思わずのぞみは声をあげてしまう。
「紅さま!」
だが次の瞬間、あ、と言って黙り込んだ。"園長先生"と呼ぶと言い張ったくせに、皆が"紅さま"と呼ぶのにつられてつい口から出てしまった。
紅が逸らしていた視線をのぞみに戻して切れ長の目を見開く、そして嬉しそうににっこりと微笑んだ。
「…いいねぇ、のぞみの"紅さま"は。格別だ」
「…それより、悪いあやかしというのは何ですか?」
のぞみの問いかけが聞こえているはずの紅が切れ長の目をすっと逸らした。そして気まずそうにもぐもぐと口を動かしている。
ここに来るあやかしは、たましいをとったり人を傷つけたりしないと言ったくせにとのぞみは、少し腹が立った。また口から出まかせを言って騙したな。
「悪いあやかしがいるんですか?」
再び尋ねるが、紅はあさっての方向を向いたままだ。そんな彼に苛立ちを募らせて思わずのぞみは声をあげてしまう。
「紅さま!」
だが次の瞬間、あ、と言って黙り込んだ。"園長先生"と呼ぶと言い張ったくせに、皆が"紅さま"と呼ぶのにつられてつい口から出てしまった。
紅が逸らしていた視線をのぞみに戻して切れ長の目を見開く、そして嬉しそうににっこりと微笑んだ。
「…いいねぇ、のぞみの"紅さま"は。格別だ」