パクリもぐもぐもぐ。
 ごくんと満足そうに喉を鳴らして、紅がのぞみの頭に口づけた。
「うーんやっぱり、美味しいなぁ。のぞみのぞぞぞは」
 その瞬間、のぞみの中の怖い気持ちが、少しだけ和らいだ。
 紅が赤い唇をぺろりと舐めて、にっこりと微笑んだ。
「少しは、落ち着いた?」
「こ、こ、こ…」
「ん? なあに?」
 バチン!
「この、変態!!」
 怖い気持ちがなくなったら、次は怒りが湧いて来た。まがりなりにも女子であるのぞみの布団になぜいっしょに寝ているのか。
 紅が嬉しそうに笑い出す。
「あはは!その様子だと元気だね。心配したよ、昨夜は青い顔をしてすっかりのびてしまったからね。しかもそのままぐーぐー寝てしまうし…」
 そうさせた張本人のくせに、悪びれることなくそんなことを言う紅を睨みながら、のぞみは慌てて布団を出る。だがすぐに、自分が白い浴衣を着ていることに気がついて目を剥いた。少しはだけだその浴衣を一生懸命直しながら、のぞみは真っ赤になってしまう。気を失う前は確かTシャツを着ていたはずなのに、これは一体…。