「やりすぎたかな…」
 青い顔でぐったりとしてしまったのぞみを腕に抱いて、紅は呟いた。
「のぞせんせー」
 紅に群がりのぞみに手を伸ばす子供たちを、サケ子が少々手荒に追い払いながら呆れたような声を出した。
「何をやってるのですか」
 紅は頭を掻いた。
「ちょっとだけ脅かして、あわよくばぞぞぞをもう一度もらおうと思ったのだけど、思ったよりも彼女は怖がりだったようだ」
「そういうことを言っているのではありません。いったいどういうつもりなんです? 人間をここに入れるなんて。…契約だなんて嘘ついてまで」
 あやかし同士の約定がたましいを懸けるのは本当だが、あの契約はそうなってはいない。
「だって、初めからかの子が見えるなんて貴重じゃないか」
「でも人間です」と、サケ子がため息をついた。