とっさにやってしまったと頭の片隅で思うけれど、だからなんだと自分を奮い立たせた。
 紅はというと、一瞬驚いたように静止して頬に手を当ててから、弾かれたように笑い出した。
「ははは! ごめんごめん、つい、ね! それにしてものぞみは強いなぁ、私を叩くおなごはそうそういないよ」
 力いっぱい叩いたはずなのに、たいして痛そうでもなく笑い続ける紅につられて、子どもたちも笑いだす。
「あははは! 紅さま、えっちだ、えっち~」
「ひゃひゃひゃひゃ! おっこられた~!」
 のぞみは頬を膨らませて紅を睨みながらも、不思議な気分に陥っていた。奇妙なカタチをしていても、子どもたちの無邪気な笑顔は、人間の子どもと何も変わらないように思える。
「のぞ先生、つよーい!」
 いつのまにか、一つ目の子がのぞみの膝に乗っている。そしてその大きな瞳で瞬きをしながらのぞみを上げる。
「かっこいい~」