「それに必要な場所だと言うのも本当だよ。この子たちの親はみな働きに出ているのだから」
 紅の言葉にハッとしてのぞみは子どもたちを見回した。
 そうだここは保育園。ここにいるのは保育の必要がある子どもたちなのだ。
 でもあやかしが…?
「仕事へ…?」
 どういうことだろう。まさか人間に変装して?ハテナマークでいっぱいの、のぞみの頭の中を覗いたかのように、紅が吹き出した。そして笑いながら、「違う違う」と首を振った。
「さっき言ったように、あやかしの食べ物は人間の"ぞぞぞ"だからね。日が暮れると街へ出て、彼らをほんの少し驚かして、"ぞぞぞ"をいただくのさ。そしてそれを子どもたちに食べさせる。それがあやかしの仕事だよ」
 のぞみからしたら、またぞぞぞとしてしまいそうな紅の言葉に、子どもたちが嬉々として口々に話し出す。
「"ぞぞぞ"は、美味しいんだよ!」
「りっぱなあやかしになるためには沢山食べなきゃいけないんだよ」