部屋の中には、けん玉、おはじき、手裏剣、輪投げなどおもちゃが散乱しているし、外には三輪車もあるようだった。
 それらを見つめながらのぞみはゆっくりと口を開く。
「こ、ここは、お化けの保育園なんですね?」
 奥にいる女性が眉を潜めて、何かを言いかける。それを手の動きで止めて、紅が先に口を開いた。
「お化けではなく"あやかし"と呼んでほしいけれど。でも正解だ。ここは『山神あやかし保育園』あやかしの子どもたちを預かる保育園だよ」
「あああああやかしの子のなんて!」
 のぞみは声をあげる。一時的に落ちついていた恐い気持ちがまた少しぶり返して、それと同時に騙されたという悔しい気持ちも湧いてきた。
 やっぱり、うまい話には裏があるのだ。施設を卒業するときに、先生にあれほど忠告されたのに、あっさり乗っかってしまった自分が情けない。
 「わわわ私、あやかしの保育園だなんてききき聞いていません!」