のぞみには、お金も職も身よりもない。保証人になってもらえる人もなく、仕事に就いていないのでは、貸せる部屋がないというのだ。
「せめて仕事があれば、オーナーに掛け合ってあげられるけど」
 おじさんはそう言って、つるつるの頭を掻いた。
 のぞみはこの時になって、自分の考えの甘さを痛感した。とりあえず、ここへ来ればなんとかなると思っていたけれど、甘かったようだ。
 住所が決まらなければ、仕事に就くことも難しいのかもしれない。
 のぞみは眉を下げた。
「この春、短大を卒業したので保育士の資格はあります。だからなんとかこの街で仕事が見つかればと思ったんです。本当は、仕事を見つけてから来る方がいいことくらいわかっていましたけど、一刻も早くこの街に来たかったから…」
 おじさんは、目をパチクリとさせてのぞみを見た。
「どうしてこの街に?」
「…兄を、探しているんです」