「わ、私には、無理です。え、園長先生と呼ばせていただきます!」
 思わず声をあげると紅は、少し驚いたように切れ長の目を見開いて、クスリと笑った。
「そんな風に呼ばれるのは初めてだけれど…、まぁ君が呼びやすいならそれでいいよ」
「そ、そうします…」
 頬を染めて答えながら、のぞみは全国津々浦々保育園はたくさんあれど、こんなに若くてかっこいい園長先生がいるのはこの保育園だけじゃないだろうかなどという不謹慎なことを考えた。
 もしかして、私ってすごくラッキー?
 そんなのぞみの内心はよそに、紅は再び本殿に向かって歩き出す。慌ててのぞみも後を追った。
 保育園は、本殿の裏の古い平家の建物だった。小さな園庭もあるけれど、森の木々に囲まれて、日の光はほとんど当たらないようだ。