「紅さま、そのようなことをおっしゃるのはおやめ下さいまし。のぞみさまは嫁入り前の娘です」
「嫁入り前って…これから嫁入りするのだから、直前じゃないか」
「それでもです!」
 紅はため息をついて、やれやれというように首を振る。
 今や志津は義姉として、のぞみ最強の味方だ。今日のために一生懸命に人間の結婚のことを調べて、白無垢を用意してくれたのも彼女だった。
「…本当にうるさいやつだ」
 紅が口を尖らせる。
 のぞみは堪えきれずに吹き出して、しばらく笑いが止まらない。これからしばらくは、ここで二世帯同居をするのだから、賑やかになりそうだ。
 紅が颯太に近づいて囁いた。
「颯太、お前が志津を元気にしてくれたことには私は感謝しているよ。だがちょっと元気にしすぎじゃないかい?…おかげで私は結婚後、小姑に悩まされそうだ」