「…のぞみと出会ってから、ずっと不思議に思っていた。なぜ胸のあたりが痛くなるのだと。…きっとのぞみが、私の中のどこに心があるのかをおしえてくれたのだろう」
 あやかし園では嵐が止んだ園庭で、皆が紅を待っている。
 手を振って、歓声を上げて。
 紅が、膝の上で呑気に寝息を立てて眠る太一のふわふわの耳を撫でた。
「可愛い子だったんだ。…あやかし園の子らを見ていると、この中にあの子がいたら良かったのにと堪らない気持ちになるけれど、今はその気持ちも愛おしいよ」
 のぞみは微笑んで頷くと、太一をしっかりと抱いて紅を見つめた。
「皆が紅さまを待っています。帰りましょう、あやかし園へ」