「良い様だな、天狗よ。他のあやかしも守ってやろうなどという愚かな考えがその身を滅ぼすのだ。己の身を己で守れないあやかしなどは、屑同然だというのに」
 ヌエから紫色の刃が飛ぶ。紅の肩から新たな血が散った。
 紅を包む赤い光はいよいよ弱くなって、今にも消えてしまいそうだ。
「紅さま!!」
 のぞみはごうごうと唸る風に負けないように力の限り叫んだ。
「紅さま!!」
 紅が振り向いて目を見開いた。
「のぞみ!!なぜ来た?!待っていろと言っただろう!!!」
 焦りを隠そうともせずに一方的に怒鳴りつける余裕のない紅をヌエが声をあげてせせら笑った。
「ぬはははは!天狗よ。人間の嫁をとったという噂は本当だったのだな?そこまで落ちぶれていたとは、はなからワシの相手ではなかったということだ」
「のぞみ!戻れ!みんなのところへ行け!!」